デュアルSIMとは、1台の端末で2枚のSIM(物理SIMまたはeSIM)を使用できる機能だ。GSMA TS.37で定義されており、2つの電話番号を持ちながら、データ通信回線・通話回線を用途に応じて切り替えられる。方式によって通話中のデータ通信の扱いが異なるため、自分の端末がどの方式に対応しているかを知ることが重要だ。
デュアルSIMの4つの方式
デュアルSIMには主に4つの方式がある。それぞれ同時に使えるネットワークの数と範囲が異なる。
DSSS(Dual SIM Single Standby)
「デュアルSIMシングルスタンバイ」と呼ぶ。2枚のSIMを挿入できるが、一度に待ち受けできるのは1枚だけだ。どちらのSIMを有効にするかを手動で切り替える必要があり、現在は旧型端末以外ではほぼ使われない。
DSDS(Dual SIM Dual Standby)
「デュアルSIMデュアルスタンバイ」と呼ぶ。2枚のSIMが同時に待ち受けできる。従来のDSDSでは片方のSIMが4G/5Gを使用すると、もう一方のSIMは3G回線に制限される場合があった。ただし最新のチップセットでは両方が4Gに対応するDSDSも存在する。3Gサービスが終了している地域では端末の対応状況を確認することが必要だ。
DSDV(Dual SIM Dual VoLTE)
「デュアルSIMデュアルVoLTE」と呼ぶ。両方のSIMで4G/5G回線を維持できる。VoLTE(Voice over LTE)に両SIMが対応しているため、どちらの番号でも高音質通話が可能だ。
ただし通話中はその回線でのみデータ通信ができる。もう一方のSIMのデータ通信は停止する点に注意が必要だ。現在の主流方式はDSDVである。
DSDA(Dual SIM Dual Active)
「デュアルSIMデュアルアクティブ」と呼ぶ。2つのトランシーバー(無線送受信機)を搭載し、両方のSIMが同時にアクティブな状態を維持できる。片方のSIMで通話しながら、もう一方のSIMでデータ通信を行うことが可能だ。
2系統のトランシーバーを同時駆動するため、バッテリー消費が増える可能性がある。ハイエンドAndroid端末の一部が対応している。
方式の比較まとめ
| 方式 | 両SIM待ち受け | 両SIMで4G/5G | 通話中データ通信 |
|---|---|---|---|
| DSSS | × | × | × |
| DSDS | ○ | △(従来型は片方が3Gに制限される場合あり) | × |
| DSDV | ○ | ○ | △(通話中は通話SIMのみ) |
| DSDA | ○ | ○ | ○ |
主要端末のデュアルSIM対応状況
iPhone
iPhoneはDSDSに対応しているが、DSDAには対応していない。Appleの公式ドキュメントではDSDSと表記されており、両方のSIMで通話・SMS・データ通信の待ち受けが可能だ。通話中はもう一方のSIMのデータ通信が停止する。
- iPhone XS/XS Max/XR(2018年)以降: 物理SIM+eSIMのデュアルSIM構成に対応
- iPhone 13シリーズ以降: eSIM+eSIMのデュアルeSIM構成に対応(2つのeSIMを同時に有効化)
- iPhone SE(第3世代): デュアルeSIMに対応
iPhoneのデュアルSIMでは、通話に使う回線とデータ通信に使う回線をそれぞれ指定できる。データ通信回線の切り替えは「設定」→「モバイル通信」から行う。
「デュアルSIMの設定(iPhone)」の詳細手順は準備中だ。
Android(Google Pixel)
Google Pixel 3a以降はDSDS(物理SIM+eSIM)に対応している。
- Pixel 7/7 Pro(2022年)以降: デュアルeSIM(2つのeSIMを同時有効化)に対応。Android端末として初めてのデュアルeSIM対応だった
- Pixel 10シリーズ(米国向け): eSIM専用(物理SIMスロットなし)
「デュアルSIMの設定(Android)」の詳細手順は準備中だ。
Samsung Galaxy
Samsung Galaxy S20以降のフラグシップモデルは基本的にeSIMに対応し、デュアルSIM構成が可能だ。対応状況は地域・キャリアロックの状態により異なる。
デュアルSIMの主な活用シーン
仕事用回線と個人用回線を1台で管理する
仕事の電話番号(MNO回線)と個人の電話番号(MVNO回線)を1台の端末に収め、電話帳や着信音で使い分けられる。端末を2台持つ必要がなくなり、バッテリーの管理や荷物の削減につながる。
通話に使う回線・データ通信に使う回線をそれぞれ設定で固定しておくと、誤って高額な通話プランで個人の電話をかけるリスクを減らせる。
メイン回線+格安SIMでコストを最適化する
大手キャリア(MNO)の回線を通話用に維持しながら、格安SIM(MVNO)の大容量データプランをデータ通信専用として使う構成だ。MNOとMVNOの違いについては「MNO vs MVNO vs サブブランド — 違いと選び方」を参照。一般的にMVNOはMNOよりデータ単価が安いため、通話品質を維持したままデータ費用を抑えられる。必要なデータ量の見積もりには「データ通信量の目安」が参考になる。
各プランの料金比較にはSimFinderで検索できる。
副回線として通信障害に備える
メイン回線のキャリアに障害が発生したとき、別のキャリアのサブ回線があれば通信を継続できる。日本ではpovo 2.0のような、最低限の維持費でeSIMを確保できるサービスを副回線として使う方法が定番だ。
副回線の詳しい選び方は「副回線の選び方 — 通信障害に備える(準備中)」で解説する予定だ。
海外旅行でデュアルSIMを活用する
国内SIM(物理SIM)を維持しながら旅行先のeSIMをデータ専用で追加する構成が便利だ。
- 日本の電話番号でSMSを受信できるため、銀行やSNSのSMS二段階認証を海外でも受け取れる
- 現地のデータ通信はeSIMで利用するため、国際ローミング料金が発生しない
- 渡航前に日本のWi-Fi環境でeSIMプロファイルをインストールしておくと、現地で即時利用できる
旅行用eSIMの多くはデータ通信専用であり、音声通話やSMSの送受信は含まれない。通話はLINEやWhatsAppなどのVoIPアプリで代替するのが一般的だ。旅行eSIM以外の選択肢も含めた比較は「海外でスマホを使う4つの方法」を参照。
海外でのデュアルSIM活用の詳細は「海外旅行でのデュアルSIM活用(準備中)」で解説する予定だ。
デュアルSIM利用時の注意点
データ通信に使う回線を明示的に設定する
デュアルSIM環境では、データ通信に使う回線を設定で明示的に指定する必要がある。設定せずに使うと、意図しない高額プランでデータ通信が発生する場合がある。
iPhoneでは「設定」→「モバイル通信」→「通信のオプション」から「データ通信用のモバイル通信回線」を指定する。
通話中のデータ通信制限
DSDVの場合、通話中はもう一方のSIMのデータ通信が停止する。例えばSIM Aで通話しながらSIM Bのデータ通信を使うことはできない。ビデオ会議中に着信に応答するような場面では注意が必要だ。
DSDAに対応した端末であれば、この制限はない。
eSIMと物理SIMの組み合わせ
eSIM対応の端末なら、物理SIMスロットが1つしかなくても、物理SIM+eSIMのデュアルSIM構成が実現できる。eSIMの仕組みについては「eSIMとは — 仕組み・メリット・デメリット」を参照してほしい。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| デュアルSIMの定義 | 1台の端末で2枚のSIM(物理SIM/eSIM)を使用できる機能。GSMA TS.37で定義 |
| 主な方式 | DSSS(旧型)→ DSDS(3G制限あり)→ DSDV(現在の主流、4G/5G両対応)→ DSDA(通話中データ通信可) |
| iPhoneの対応 | Apple公式表記はDSDS。両SIMで通話・SMS・データ通信の待ち受けが可能。iPhone 13以降はデュアルeSIM対応。DSDAには非対応 |
| Pixelの対応 | Pixel 3a以降でDSDS対応、Pixel 7以降でデュアルeSIM対応 |
| 主な活用シーン | 仕事・個人の2回線管理、MNO通話+MVNO格安データ、副回線として障害対策、海外旅行でのeSIM追加 |
各プランを比較して最適な2回線の組み合わせを探すにはSimFinderで検索できる。この記事で使われている用語の定義は「SIM・モバイル通信用語集」を参照。