物理SIMからeSIMへの切り替えは、キャリアにeSIM再発行を申請してプロファイルをダウンロードするだけで完了する。電話番号・プラン・料金はそのまま引き継がれ、SIMカードの形態だけが変わる。切り替えの大まかな流れは「①端末がeSIM対応か確認 → ②キャリアにeSIM再発行を申請 → ③本人確認 → ④プロファイルをダウンロード(QRコード・アプリ・またはiPhoneのeSIMクイック転送) → ⑤開通確認 → ⑥物理SIMを廃棄」の6ステップだ。
eSIMの基礎知識(eUICC・プロファイルの仕組み)は「eSIMとは — 仕組み・メリット・デメリット」で解説している。物理SIMとeSIMの違いについては「物理SIM vs eSIM — 違いと選び方を比較」を参照してほしい。
切り替え前に確認すること
データのバックアップを取る
切り替え作業前に、端末内のデータをバックアップしておくことを推奨する。切り替え自体でデータが失われることはないが、万一の誤操作や端末のリセットに備えておくと安心だ。iPhoneであればiCloudバックアップまたはPCへのバックアップ、Androidであればクラウドバックアップや内部ストレージのコピーが一般的な方法だ。
端末がeSIMに対応しているか
切り替えの大前提として、使っている端末がeSIMに対応している必要がある。eUICCチップが搭載されていない端末にはeSIMプロファイルをインストールできない。
対応確認の方法は2つある。
- iPhoneの場合: 「設定」→「モバイル通信」を開いて「eSIMを追加」または「モバイル通信プランを追加」が表示されればeSIM対応だ。
- Androidの場合: 「設定」→「接続」または「ネットワークとインターネット」→「SIMカード」(表示名は機種により異なる)を開いてeSIM関連の項目があるか確認する。
端末モデル別の対応状況の詳細は「eSIM対応端末ガイド」で確認できる。
SIMロックが解除されているか
SIMロック(キャリアロック)がかかっている端末では、現在の契約キャリアのeSIM以外は追加できない。同じキャリアの物理SIMからeSIMへ切り替える場合はSIMロックの影響はないが、キャリア変更を伴う場合はSIMロックの解除が先に必要だ。
iPhoneのSIMロック状態は「設定」→「一般」→「情報」→「キャリアロック」で確認できる。「SIMの制限なし」と表示されていればSIMフリーだ。
日本では2021年10月1日以降に発売された端末は原則SIMロックなしで販売されているため、その後に購入した端末はこの手順を省略できる。
Wi-Fi環境を確保する
eSIMプロファイルのダウンロードにはインターネット接続が必要だ。切り替え作業中はモバイル通信が一時的に使えなくなるため、自宅のWi-Fiなど安定したネットワーク環境で作業することを強く推奨する。
キャリアへのeSIM再発行申請
物理SIMからeSIMへの切り替えは、キャリアの「SIM変更」または「eSIM発行」手続きによって行う。同じ番号・プランを維持したまま、SIMの形態を物理からeSIMに変更する申請だ。申請方法はオンラインと店頭の2通りある。
オンラインでの手続き(推奨)
多くのキャリアは公式Webサイトまたは専用アプリから、店舗に行かずにeSIMへの切り替え手続きを完結できる。
一般的な流れは以下の通りだ。
- キャリアの公式マイページまたは専用アプリにログインする
- 「SIM変更」「eSIM発行」「SIM種別変更」などのメニューを探す(メニュー名はキャリアにより異なる)
- 画面の指示に従って申請を進める
- 本人確認を行う(詳細は次のセクション参照)
- 申請が受理されるとeSIM(QRコードまたはアプリ内のプロファイル)が発行される
オンライン手続きは24時間受け付けているキャリアが多く、手続きから発行まで即日完了するケースが一般的だ。
店頭での手続き
オンライン手続きに不慣れな場合や、本人確認書類の提出が必要な状況では店頭窓口でも手続きできる。店頭では担当者が手続きを案内してくれるが、混雑時には待ち時間が発生することがある。
店頭手続きの場合、以下を持参する。
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど、各社の指定するもの)
- 現在使用中のスマートフォン(eSIMをインストールする端末)
- 現在の契約に紐づいた暗証番号(4桁)
本人確認の方法
eSIM再発行手続きでは、なりすましを防ぐために本人確認が必要だ。確認方法はキャリアや手続き方法によって異なる。
オンライン本人確認(eKYC)
多くのキャリアのオンライン手続きでは、スマートフォンのカメラを使った本人確認(eKYC)に対応している。本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)を撮影し、顔写真と照合することで確認を完了する方式だ。
SMS・電話による認証
現在の契約番号へのSMS送信または電話着信により、契約者本人であることを確認する方式もある。物理SIMが現在使える状態であれば、SMSや電話を受け取ることで本人確認を完了できる。
店頭での書類確認
店頭手続きの場合は、担当者が本人確認書類を目視確認する。
QRコードまたはアプリでプロファイルを取得する
本人確認と申請が完了すると、キャリアからeSIMプロファイルが発行される。プロファイルの取得方法はキャリアによって異なる。
iPhoneの「eSIMに変換」(eSIMクイック転送)を使う方法
iPhoneとキャリアの両方がeSIMクイック転送に対応している場合、設定アプリ内から直接「eSIMに変換」を選択するだけで切り替えを完結できる。QRコードのスキャンやキャリアのWebサイトでの別途手続きが不要な点が特徴だ。
日本の主要キャリア(ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイル・povo・LINEMO・UQモバイル・ワイモバイル等)はeSIMクイック転送に対応している。
手順は以下の通りだ。
- 「設定」→「モバイル通信」を開く
- 現在の物理SIMの回線を選択する
- 「eSIMに変換」をタップする
- 画面の指示に従って手続きを進める
「eSIMに変換」が表示されない場合は、キャリアまたはiOSのバージョンが対応していない可能性がある。その場合は次のQRコードをスキャンする方法またはキャリアアプリを使う方法で手続きする。
QRコードをスキャンする方法
QRコードが発行された場合、端末の「設定」からQRコードをスキャンしてプロファイルをダウンロードする。
iPhoneの場合の手順は以下の通りだ。
- 「設定」→「モバイル通信」を開く
- 「eSIMを追加」または「モバイル通信プランを追加」をタップする
- カメラが起動するので、発行されたQRコードをスキャンする
- 「モバイル通信プランが検出されました」と表示されたら「続ける」をタップする
- eSIMのダウンロードが完了するまで待つ(数秒〜1分程度)
QRコードが同じ端末の画面上に表示されている場合(スキャンできない状態)の対処方法など、iPhoneでのQRコード設定の詳細な手順は「QRコードでeSIMを設定する(iPhone)」を参照してほしい。
QRコードが読めないときの手動入力
QRコードが印刷状態の不鮮明さや端末カメラの読み取りエラーでスキャンできない場合、SM-DP+アドレス(サーバーアドレス)とアクティベーションコードを手動入力することでプロファイルを取得できる。
- iPhoneの場合: 「設定」→「モバイル通信」→「eSIMを追加」→「詳細情報を手動で入力する」を選択し、キャリアから提供されたSM-DP+アドレスとアクティベーションコードを入力する。
- Androidの場合: 「SIMを追加」画面で「手動で入力」または「コードを入力」のオプションを選択し、同様に入力する(機種によりメニュー名が異なる)。
SM-DP+アドレスとアクティベーションコードはキャリアのマイページ、申請完了メール、または店頭で発行される紙に記載されている。QRコードをスキャンした場合と同じプロファイルが取得されるため、機能や使用期限に違いはない。
Androidの場合の手順はメーカーや機種によって異なる。一般的には「設定」→「ネットワークとインターネット」→「SIM」または「モバイルネットワーク」→「SIMを追加」と進んでQRコードをスキャンする。Androidでの詳細な手順は「QRコードでeSIMを設定する(Android)」を参照してほしい。
キャリアアプリからダウンロードする方法
QRコードではなく、キャリアの専用アプリ内の操作だけでプロファイルをインストールできるキャリアもある。アプリ内でeSIM発行の申請から、プロファイルのインストールまでを一連の流れで完結できる方式だ。
楽天モバイルはこの方式を採用しており、「my 楽天モバイル」アプリ(またはWebサイト)経由でeSIM発行・開通手続きを行う。
開通確認
プロファイルのダウンロードが完了したら、eSIMが正常に開通しているか確認する。
確認すべき項目は以下の通りだ。
- 端末の電波状態表示にキャリア名と電波アンテナが表示されているか
- モバイルデータ通信で実際にインターネット接続できるか
- 発信・着信が正常に機能するか(通話プランがある場合)
開通後にモバイルデータ通信が繋がらない場合は、「設定」→「モバイル通信」でeSIMのラインが選択されているか、データ通信がオンになっているかを確認する。それでも繋がらない場合はAPNの設定が必要なことがある。
物理SIMの扱い
eSIMへの切り替えが完了すると、元の物理SIMは無効化される。物理SIMカードは以後使用できない状態になる。
物理SIMを抜くタイミング
eSIMへの切り替え作業中は、物理SIMを挿したまま手続きを進める。プロファイルのダウンロードと開通確認が完了し、eSIMで通信できることを確認してから物理SIMを取り外すのが正しい順序だ。手続きの途中や開通確認前に物理SIMを抜くと、通信が途絶えて作業が中断する可能性がある。
物理SIMを安全に廃棄する
物理SIMカードには電話番号・キャリア認証情報などが記録されている。そのまま捨てると個人情報漏えいのリスクがある。廃棄する際はSIMカードのICチップ(金色の部分)に傷をつけて読み取れない状態にするか、SIMカードをハサミで裁断してから廃棄する。
一部のキャリアはSIMカードの回収・廃棄サービスを店頭で提供している。
切り替え時の主な注意点
通信が断絶する時間がある
切り替え作業中(物理SIMの無効化からeSIMの開通確認まで)はモバイル通信が一時的に使えなくなる。プロファイルのダウンロード操作自体は数分程度で完了するが、開通処理はキャリアによって異なり、即時〜最大1時間程度かかる場合がある。緊急の連絡が予想される状況での作業は避け、Wi-Fi環境下で作業することを推奨する。
機種がeSIM対応か必ず事前確認する
eUICCチップが搭載されていない端末ではeSIMプロファイルをインストールできない。切り替え手続きを始める前に端末の対応確認を済ませておく。
一度発行されたQRコードは1台・1回のみ有効
eSIM発行時に発行されるQRコードは、GSMAのセキュリティ仕様により1台の端末に対して1回しか使用できない。スキャン前に紛失・期限切れになった場合は、キャリアに再発行を申請する必要がある。再発行には手数料が発生するキャリアと無料で対応するキャリアがあり、金額はキャリアによって異なるため、公式サポートページで事前に確認しておくとよい。
デュアルSIM端末での運用との関係
iPhoneやデュアルeSIM対応のAndroid端末では、物理SIMのスロットを残したまま複数のeSIMプロファイルを保持できる。この記事で解説している「物理SIMからeSIMへの切り替え」は、既存の物理SIMの契約をeSIM形式に変換する手続きであり、切り替え後は物理SIMが無効化される。
一方、デュアルSIM運用を目的に別キャリアのeSIMを追加する場合は、既存の物理SIMを維持したまま新たなeSIMを追加する形になる。これは本記事の手続きとは異なる。副回線としてeSIMを追加したい場合は、物理SIMに手を加えずに新規でeSIMプランを契約するのが一般的な方法だ。
旅行用eSIMや副回線eSIMとは別の手続き
この記事で解説している手続きは、現在の国内キャリアとの契約を物理SIMからeSIMに変更するものだ。新たに別のキャリアに乗り換える場合(MNP)や、旅行用eSIMを追加する場合は別の手順が必要になる。
MNPの手続きについては「MNP乗り換えステップバイステップ」を、旅行用eSIMの追加については「初めての旅行eSIM完全ガイド」を参照してほしい。
日本の主要キャリアの手続きの一般的な流れ
日本の主要キャリア(NTTドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルの大手4社、およびahamo・povo・UQモバイル・ワイモバイル・LINEMOなどのサブブランド)はすべてeSIMに対応しており、物理SIMからeSIMへの切り替え手続きを提供している。
各キャリアとも基本的な流れは共通している。
- マイページ/アプリにログイン: 各社の公式マイページまたは専用アプリにアクセスする
- SIM変更メニューを選択: 「SIM変更」「eSIM発行」「SIM種別変更」などのメニューから申請する
- 本人確認: eKYCまたは既存の認証方法で確認する
- eSIMプロファイルの発行: QRコードまたはアプリ内操作でプロファイルが発行される
- 端末でプロファイルをダウンロード: 上記の手順でインストールする
- 開通確認: データ通信・通話の動作を確認する
オンライン専用ブランド(ahamo・povo・LINEMO)はすべての手続きがオンラインで完結する仕組みになっている。
具体的な手続き先や最新の手順については、各キャリアの公式サポートページを確認してほしい。手続き内容は随時更新されるため、公式の案内が最も正確な情報源だ。
eSIM対応プランを比較したい場合はSimFinderのeSIM対応フィルターで絞り込める。
FAQ
Q. 物理SIMからeSIMに切り替えると電話番号は変わりますか?
A. 変わりません。同じキャリアの同じプランのまま、SIMの形態を物理からeSIMに変更するだけなので、電話番号・契約内容・月額料金はそのまま引き継がれます。
Q. 切り替え中にどのくらい通信が止まりますか?
A. プロファイルのダウンロード操作自体は数分程度で完了しますが、開通処理はキャリアによって異なり、即時〜最大1時間程度かかる場合があります。作業中はモバイル通信が一時的に使えなくなるため、Wi-Fiが使える環境で作業することを推奨します。
Q. 物理SIMを挿したまま切り替えの手続きを始めてもよいですか?
A. キャリアのオンライン手続き中は物理SIMを挿したままで構いません。eSIMのプロファイルダウンロードが完了し、開通処理が終わった後に物理SIMを取り外します。手続き途中で物理SIMを抜くと通信が途絶え、手続きが完了できなくなる場合があります。
Q. 切り替え後に物理SIMはどうすればいいですか?
A. 切り替え完了後、物理SIMは失効しています。個人情報が含まれているため、SIMカードのICチップ部分に傷をつけるか、専用のSIM廃棄サービスを使って廃棄してください。そのまま捨てるのは避けてください。
Q. 端末がeSIM非対応でも切り替えできますか?
A. できません。eSIMへの切り替えには端末がeUICCチップを搭載している必要があります。端末のeSIM対応状況はメーカー公式サポートページで確認してください。対応端末の一覧は「eSIM対応端末ガイド」を参照してください。