このガイドは「設定を終えた後、旅行中にどう使い分けるか」に特化している。旅行eSIMの仕組みや対応端末についてはデュアルSIMとはを、eSIMのインストール手順については初めての旅行eSIM完全ガイドを参照してほしい。渡航前に確認すべき事前準備は渡航前のスマホ準備チェックリストにまとめている。
本記事では「日本のSIM(ホームSIM)を維持しながら、旅行先のeSIM(旅行eSIM)をデータ回線として使う」構成を前提に、旅行中の実際の運用方法を解説する。
旅行用の標準デュアルSIM構成
日本人旅行者にとって最も実用的なデュアルSIM構成は次のとおりだ。
| 役割 | SIM |
|---|---|
| データ通信 | 旅行eSIM(現地ネットワーク接続) |
| 通話・SMS受信 | 日本のホームSIM(物理SIMまたは日本キャリアのeSIM) |
この構成のメリットは3点ある。
- 日本の電話番号を維持できる — 銀行・決済サービス・SNSのSMS認証コードを受信し続けられる
- 国際ローミング料金が発生しない — データ通信はすべて旅行eSIMを経由するため、ホームSIMのローミング課金を回避できる
- 帰国後の手続きが不要 — 帰国後にデータ回線を日本SIMに戻せばそれだけで完了する
この構成を実現するには、端末がデュアルSIM対応である必要がある。iPhone XS・XR(2018年)以降、Google Pixel 3a以降など現行の主要端末は対応している。デュアルSIMの方式(DSDS/DSDV/DSDA)の詳細はデュアルSIMとはで解説している。
旅行eSIMのプランをまだ選んでいない場合は、旅行eSIMの選び方およびSimFinderの旅行eSIM検索で渡航先・期間・容量を指定して比較できる。
各回線の役割を設定する
旅行eSIMをインストールしたら、端末の設定画面で2回線の役割を明示的に割り当てる。設定しないまま使うと意図しない課金が発生する可能性がある。
iPhone での設定
「設定」→「モバイル通信」を開くと、登録されている回線の一覧が表示される。
データ通信回線の指定
「モバイルデータ通信」をタップし、旅行eSIMの回線を選択する。これにより、モバイルデータは旅行eSIMのみから消費されるようになる。
「モバイルデータ通信の切り替えを許可」の設定
「モバイルデータ通信」の設定画面に「モバイルデータ通信の切り替えを許可」というトグルがある(Apple公式の正式名称。support.apple.com/ja-jp/109317)。
この機能はカバレッジや可用性に応じて、両方のSIMのデータを自動的に切り替える機能だ。旅行中は必ずOFFに設定する。ONのままにしておくと、旅行eSIMの電波が弱い場面でホームSIMのデータが自動使用され、日本キャリアのローミング課金が発生するリスクがある。
通話・SMSに使う回線の確認
「デフォルトの音声回線」でホームSIM(日本のSIM)が選択されていることを確認する。
ホームSIMのデータローミング設定
「モバイル通信」の回線一覧からホームSIM(日本のSIM)を選択し、「データローミング」がOFFになっていることを確認する。OFFになっていれば、日本のSIMでモバイルデータが消費されることはない。
Android(Google Pixel)での設定
「設定」→「ネットワークとインターネット」→「SIM」を開く。
- 「優先SIM」または「データSIM」で旅行eSIMを選択する
- 「通話SIM」でホームSIM(日本のSIM)を選択する
- ホームSIMの設定を開き「ローミング」をOFFにする
Samsung Galaxy の場合、「設定」→「接続」→「SIMカードマネージャー」から各SIMの役割を設定できる。メーカーや Android バージョンによって設定メニューの名称が異なる場合があるため、画面の表示に従って操作する。
旅行中のSMS 2FA受信
日本の主要サービスは SMS を使った 2FA(二段階認証)を広く採用している。旅行中にホームSIMを維持することで、これらのコードを引き続き受信できる。
SMS認証を使う主なサービス
日本では以下のようなサービスがSMS認証を採用している。
- 銀行・ネット証券: 三井住友銀行・みずほ銀行・楽天銀行など多くの金融機関がSMSまたは専用アプリで 2FA を実施している
- 決済・EC: メルカリ・楽天市場・PayPay など
- SNS: LINE・X(旧Twitter)・Instagram など
旅行中にこれらのサービスへのログインや取引が発生した場合、SMS 認証コードはホームSIM(日本の電話番号)に届く。デュアルSIM構成でホームSIMの電波が入っていれば、海外からでも受信できる。
SMSが届く仕組みと注意点
SMS はデータ通信回線(モバイルデータ)とは別の経路で届く。ホームSIMの「データローミング」を OFF にしていても、SMS 受信の機能は維持される。
ただし以下の状況では SMS が届かない可能性がある。
- 端末が機内モード中: 両方の回線が遮断される。機内モードを解除後に未着の SMS が届く場合がある
- ホームSIMが圏外または「使用しない」設定: ホームSIMを一時的に無効化している場合は SMS も受信できない
- 現地の電波環境の問題: 建物の地下など電波の届きにくい場所では遅延や不達が起こりうる
SMS 認証の受信が特に重要なサービス(銀行アプリなど)については、旅行前に認証アプリ(Google Authenticator・Authy・Microsoft Authenticator 等)への移行を検討することも有効だ。認証アプリへの移行は各サービスのセキュリティ設定から行える。SMS 認証のリスクについてはSIMスワップ詐欺とはも参照してほしい。
ホームSIMでの着信電話への応答
デュアルSIM構成でホームSIMを有効にしていれば、日本の番号への着信を海外でも受けられる。
ただし注意点がある。ホームSIMに着信した電話を受けた際に、キャリアの「国際ローミング着信課金」が発生するかどうかは、ご契約のプランによって異なる。着信だけで課金される場合があるため、旅行前に各キャリアの海外ローミング着信に関するプラン内容を確認することを推奨する。
データローミングと着信課金は別の概念だ。 データローミングを OFF にしても、音声通話の着信ローミングが自動的に無効になるわけではない。
旅行中に日本への発信が必要な場合は、旅行eSIMのデータ回線を使って LINE・WhatsApp などの VoIP アプリを使うのが一般的だ。旅行eSIMの多くはデータ専用であり音声通話機能を持たないが、VoIP アプリによる通話はデータ通信として扱われるため使用できる。
ホームSIM側で必ずオフにすべき設定
ホームSIMに関するいくつかの設定を適切に制御しないと、意図しないローミング課金が発生する可能性がある。渡航直前に以下を確認する。
データローミング(必須)
ホームSIMの「データローミング」は必ず OFF にする。これをONのままにしていると、旅行先で日本キャリアの国際データローミング料金が発生する。
- iPhone: 「設定」→「モバイル通信」→ホームSIMの回線を選択→「データローミング」をOFF
- Android: 「設定」→「ネットワークとインターネット」→ホームSIMを選択→「ローミング」をOFF
モバイルデータ通信の切り替えを許可(iPhone のみ・必須)
前述のとおり、iPhone の「モバイルデータ通信の切り替えを許可」は旅行中は OFF に設定する。
キャリアが提供する国際ローミングサービスへの加入状況
日本の大手キャリアは海外でのデータ通信向けに専用のオプションや自動適用のサービスを提供している(サービス名・条件・料金はキャリアや時期により変わるため、具体的な金額の記載は行わない)。
これらのサービスが有効になっていると、ホームSIMでのデータ通信が発生した際に自動的に適用される。旅行eSIMでデータ通信を完結させる場合、ホームSIMのデータローミングを OFF にしておけば、これらのサービスが起動することはない。
ただし万が一、設定の操作ミスや端末の自動切替によってホームSIMでデータが使われてしまった場合の保険として、各キャリアのローミングサービスの仕組みを把握しておくと安心だ。渡航前にキャリアの公式サイトで現行のサービス内容を確認することを推奨する。
iMessageと Wi-Fi Calling(iPhone)
iPhone の iMessage は Wi-Fi 接続時にも SMS のように機能する。設定が有効になっていると旅行eSIMのデータを使ってメッセージの送受信を行う場合がある。旅行中のデータ消費を制御したい場合は「設定」→「メッセージ」→「iMessage」の状態を確認する。
Wi-Fi Calling(Wi-Fi 通話)は日本のキャリアではほぼ未普及だが、一部のキャリアが提供している場合は旅行先でも Wi-Fi 経由で音声通話が可能になる。対応状況は各キャリアの公式情報で確認する。
帰国後の設定戻し
帰国後は以下の設定を確認・復元する。
手順
1. データ通信回線をホームSIMに戻す
- iPhone: 「設定」→「モバイル通信」→「モバイルデータ通信」→ホームSIM(日本のSIM)を選択
- Android: 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「SIM」→「データSIM」でホームSIMを選択
2. 旅行eSIMのデータローミングをOFFに戻す(任意)
旅行eSIMを次の旅行まで保持する場合、eSIM側の「データローミング」を OFF にしておく。国内で旅行eSIMが起動していてもデータが消費されることはないが、明示的に OFF にしておくと管理がしやすい。
3. 「モバイルデータ通信の切り替えを許可」の再設定(iPhone のみ)
旅行中にOFFにした「モバイルデータ通信の切り替えを許可」を、必要に応じて元の設定(通常はON)に戻す。この設定は国内の通常利用では機能し、副回線が必要な場面でデータをカバーしてくれる。
4. 旅行eSIMプロファイルの管理
旅行eSIMのプロファイルは、次の旅行でも同じ渡航先・プロバイダーを使う予定があれば削除せずに保持することができる(プロバイダーの再利用ポリシーを事前に確認すること)。不要であれば削除してeSIM一覧を整理する。
- iPhone: 「設定」→「モバイル通信」→該当の旅行eSIM回線→「eSIMを削除」
- Android(Pixel): 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「SIM」→該当のeSIM→「削除」
端末の制約
デュアルSIM運用にあたって知っておくべき端末側の制約をまとめる。
iPhone の制約
iPhoneはApple公式表記のDSDSに対応しているが、DSDAには対応していない。
- 通話中はデータ通信が停止する可能性がある: ホームSIM で着信に応答している間、旅行eSIM のデータ通信が一時停止することがある(DSDVの挙動)
- 物理SIMスロット1つ+eSIM: iPhone XS〜iPhone 12 の組み合わせは物理SIM+eSIM。iPhone 13 以降はeSIM×2(デュアルeSIM)も可能
- SIMロック: iPhone が以前のキャリアのSIMロックを受けている場合、旅行eSIMが使えない。「設定」→「一般」→「情報」→「キャリアロック」で「SIMの制限なし」と表示されていることを確認する
- iPhone 16 以降(国内版): Apple公式の発表によると物理SIMスロットを持つ。eSIM対応は従来と同様
Android の制約
Android 端末はメーカーやモデルによって対応状況が異なる。
- DSDA対応端末: 一部のハイエンド Android 端末は DSDA に対応しており、通話中もデータ通信を継続できる
- デュアルeSIM対応: Pixel 7(2022年)以降はeSIM×2の同時有効化に対応している
- メーカーによる設定UI の差異: Samsung・OPPO・Xiaomi 等のメーカー端末では設定メニューの名称や手順が異なる場合がある
バッテリー消費
デュアルSIM構成(2回線を同時に有効化)では、シングルSIMと比較してバッテリー消耗が増加する。特にホームSIMの電波が弱い環境では、端末がネットワークを探索し続けるため消耗が増える(最大20%程度の追加消耗が報告されている)。バッテリーが気になる場合、用件がないときにホームSIMを一時的に無効化することで消耗を抑えられる。
よくある質問
関連ガイド
デュアルSIM全般の仕組みについてはデュアルSIMとは — DSDS・DSDV・DSDAの仕組みと活用法を参照。旅行eSIMのインストール・有効化手順は初めての旅行eSIM完全ガイドで詳しく解説している。渡航前の準備全体は渡航前のスマホ準備チェックリストにまとめている。通信手段全体の選択肢については海外でスマホを使う4つの方法、プランの選定基準は旅行eSIMの選び方が参考になる。SMS認証のセキュリティリスクについてはSIMスワップ詐欺とはも合わせて読んでほしい。
SimFinderで旅行eSIMを比較する
渡航先・旅行期間・必要なデータ容量を入力すると、複数プロバイダーのプランをまとめて比較できる。デュアルSIM構成で使うデータ専用プランの選定に活用してほしい。