海外での通話・SMSは、何も対策をしなければローミング料金によって高額になりやすい。しかし手段を選べば通話コストを大幅に抑えることができる。
この記事の要点:
- 海外での音声通話・SMSには発信・着信どちらにもローミング料金が発生しうる
- IP電話アプリ(LINE・WhatsApp・FaceTime)をデータ回線で使うことが最も手軽な節約策
- Wi-Fi CallingはキャリアのSIMで日本の番号を使ったまま無料(データ消費のみ)で通話できる
- SMS認証コードの受信は海外では届かないリスクがあり、事前の対策が必要
1. 海外での通話・SMSのコスト構造
発信料金と着信料金
国際ローミング中の通話では、発信だけでなく着信にも料金が発生しうるという点を押さえておく必要がある。
発信料金はわかりやすい。自分から電話をかけた場合に課金される。これに対し着信課金とは、海外ローミング中に日本の番号あての電話を受けた場合に、受信側にも課金が発生する仕組みである。仕組みとしては、発信者からの通話がまず日本(ホームネットワーク)に着信し、そこから渡航先(ビジテッドネットワーク)へ転送される形になる。このホームネットワーク⇄ビジテッドネットワーク間の転送に費用が生じるため、着信側に課金される。
ただしキャリアとプランによって着信が無料のケースもある。利用中のキャリアの公式情報を必ず確認してほしい。
SMSの料金
SMSについても同様に、送信・受信それぞれで料金体系が異なる。多くのキャリアでSMS受信は無料または低額に設定されているが、送信は有料のケースが多い。海外からのSMS送信は発信扱いとなり、渡航先・キャリア・プランによって料金が変わる。
SMSはデータ回線とは独立した経路
SMS(ショートメッセージサービス)は、モバイルデータ通信(インターネット)とは独立した信号経路で届く。このため、端末のデータローミングをオフにしていても、ホームSIMが有効な状態であればSMSを受信できる場合がある。ただし渡航先でホームキャリアのローミングパートナーが存在しない地域や、特定の条件下では届かないケースもある。
国際ローミングの仕組みや料金モデルの詳細については国際ローミングの仕組みと料金で体系的に解説している。
2. 節約策①:IP電話アプリをデータ回線で使う
最も手軽で広く使われている節約策が、LINE・WhatsApp・FaceTime等のIP電話アプリをデータ回線(インターネット)経由で使う方法だ。
仕組み
IP電話アプリは音声をデータパケットとしてインターネット経由で送受信する。これはVoIP(Voice over IP)と呼ばれる技術であり、通話はモバイルネットワークの「音声チャネル」ではなく「データチャネル」を通る。このためキャリアの音声ローミング料金は発生しない。
代わりにデータ通信を消費する。Wi-Fi接続中であれば実質的に無料(または通話コストのみ)で通話できる。モバイルデータを使う場合はデータ容量を消費するが、一般的なVoIP通話のデータ消費量は音声通話1時間あたり数十MB程度(アプリや通話品質により異なる)であり、動画ストリーミングと比べると非常に少ない。
主なIP電話アプリ
LINE
- アプリユーザー同士は音声・ビデオ通話が無料(データ消費のみ)
- 「LINE Out」機能を使えばLINE未登録の固定電話・携帯電話にも発信可能(有料)
- 日本国内での普及率が高く、家族・友人との通話手段として最も実用的
- アプリユーザー同士の音声・ビデオ通話が無料
- 国際的な利用者が多く、海外の現地ユーザーや外国人との通話に適している
- エンドツーエンド暗号化が標準搭載
FaceTime
- AppleデバイスとAppleデバイスの間で音声・ビデオ通話が無料
- iOS 7以降のiPhone、iPad、Mac間で利用できる
- 非AppleユーザーはFaceTimeリンク経由での参加が可能(iOS 15以降)だが、FaceTime Audioの直接発信はAppleデバイス間のみに限定される
活用上の注意点
IP電話アプリは通話先にも同じアプリのインストールが必要(または相応の手段)となる。また、モバイルデータ経由で使う場合はデータローミングがオンになっていることが前提だ。Wi-Fi環境を基本として使い、外出中はデータ通信を節約しながら利用するのが現実的な運用方法となる。
3. 節約策②:Wi-Fi Callingの活用
**Wi-Fi Calling(Wi-Fiコール)**は、Wi-Fiネットワーク経由でキャリアの電話サービスを利用する仕組みで、日本の電話番号をそのまま使って通話できる。
IP電話アプリとの違い
IP電話アプリはアプリ内の独自番号・アカウント間でのみ通話できる(LINE Outなど有料サービスを除く)のに対し、Wi-Fi Callingは「日本のキャリアSIMの電話番号」でそのまま発着信できる点が異なる。相手がLINEを使っていなくても、日本の電話番号への発信・着信が可能だ。
仕組み
Wi-Fi CallingはVoWiFi(Voice over Wi-Fi)とも呼ばれる。スマートフォンがWi-Fiに接続している状態で、通話をWi-Fiネットワーク経由でキャリアのネットワークにルーティングする技術だ。Wi-Fi Callingの詳細な技術仕組みについてはWi-Fi Callingの仕組みと設定方法で解説している。
海外での活用シーン
- ホテルや空港のWi-Fiに接続しながら、日本の番号で家族・ビジネス相手に電話できる
- モバイルデータローミング料金を気にせず通話できる(Wi-Fi接続中のみ)
- 現地のモバイルネットワークの電波が弱い場所でも、Wi-Fiがあれば通話が成立する
対応状況の確認が必要
Wi-Fi Callingの利用にはキャリアと端末の両方が対応していることが必要だ。日本の大手キャリアでは提供状況がキャリアやプランによって異なっており、対応状況は各社の公式サイトで確認する必要がある。MVNOでの対応は非常に限定的である(詳細は後述の関連ガイド参照)。
4. 節約策③:現地SIM・旅行eSIM+IP電話の組み合わせ
データ通信を現地SIMや旅行eSIMで確保し、その上でIP電話アプリを使う組み合わせが、コスト面で最も有利になりやすい。
旅行eSIMはデータ専用が主流
旅行eSIMの多くはデータ通信専用であり、音声通話・SMS機能は含まれない。このため日本のホームSIMを維持しながら旅行eSIMでデータ通信を行い、通話はIP電話アプリで行うデュアルSIM構成が現実的だ。
この場合の通話・SMSの使い分けは次のようになる:
- 音声通話: IP電話アプリ(LINE・WhatsApp等)を旅行eSIMのデータで使用
- SMS受信(認証コード等): ホームSIM経由で受信(データローミング不要)
- SMS送信: ホームSIMの料金体系に従う(費用が気になる場合はIP電話アプリのチャット機能で代替)
旅行eSIMを使った海外通信の基本については初めての旅行eSIM完全ガイドで解説している。
現地SIMの場合
現地SIMを購入すると日本の電話番号とは別に現地の番号が付与される。日本への音声発信は現地SIMの国際通話料金が発生するため、IP電話アプリで代替するのが合理的だ。現地SIMの利点は通信コストが低くデータを大容量使える点にある。
5. 節約策④:国際通話アプリ(有料発信)
IP電話アプリはアプリ同士のユーザー間では無料だが、相手がアプリを使っていない場合は有料の国際通話サービスを経由する必要がある。この用途に向けた選択肢として以下がある。
LINE Out
LINEのOut機能では、LINE未登録の相手の電話番号(固定電話・携帯電話)に向けて発信できる。クレジット(有料)を購入して使う。国際電話をアプリ経由で行うため、キャリアの国際通話料金より安価になるケースがある。
Skype・Google Voice
SkypeのSkype Creditや、Google Voiceはいずれも有料で一般電話番号あての発信ができる。どちらもインターネット経由のため、Wi-Fiまたはモバイルデータがあれば海外からも利用できる。
使い分けの考え方
- 通話先がIP電話アプリを使っている → 無料アプリ通話で十分
- 通話先がアプリを使っていない、かつ頻繁に国際電話が必要 → 有料国際通話アプリを検討
- 日本の番号での着信が必要 → Wi-Fi Callingが適している(キャリア対応が前提)
6. SMS認証コード受信への注意
SMS 2FAが海外で届かないリスク
銀行アプリ・各種Webサービスのログイン・決済認証など、多くのサービスがSMSで認証コードを送信する2段階認証(SMS 2FA)を採用している。海外にいる場合でも日本のホームSIMが有効であればSMSを受信できるケースが多いが、以下の状況では届かないリスクがある:
- 渡航先とホームキャリアのローミング協定が存在しない、または品質が低い地域
- 端末の設定でSMSが制限されている
- 発信元のサービスが国際SMSの送信に制限を設けている場合
事前に行うべき対策
SMS認証に依存したままの状態で海外渡航する前に、以下を確認・対応しておくことを強く推奨する:
- 認証アプリへの移行: TOTP(時刻ベースのワンタイムパスワード)方式の認証アプリ(Google Authenticator・Authy・Microsoft Authenticator等)は、インターネット接続なしで30秒ごとに認証コードを生成できる。SMSに依存せず、かつオフラインで動作するため海外でも安定して使える。
- バックアップコードの取得: 重要なサービスのバックアップコードを渡航前に取得・保存しておく。
- Wi-Fiテスト: 渡航前の国内でWi-Fi環境下でのSMS受信を確認しておく(これは海外でもホームSIMのSMS受信が正常かを事前確認する参考になる)。
SMS認証コードの受信リスクと代替手段の詳細については海外でのSMS認証コード受信問題と対策で詳しく解説している。
7. データローミングとSMSの設定管理
データローミングをオフにした場合の挙動
端末のデータローミングをオフにすると:
- データ通信(インターネット): 停止する
- 音声通話: 通常は維持される(ローミング中の音声チャネルは有効)
- SMS: 通常は受信できる(SMSはデータ回線とは別経路)
この特性を活かして、データローミングをオフにしてSMSと音声通話のみ有効にしておき、データ通信は現地SIMや旅行eSIM、またはWi-Fiで行う、という運用が可能だ。
iPhoneの設定
- 「設定」→「モバイル通信」→「モバイルデータ通信のオプション」→「データローミング」でON/OFF
デュアルSIM構成でiPhoneを使う場合、「モバイルデータ通信の切り替えを許可」(Allow Cellular Data Switching)をオフにしておくことで、ホームSIMのデータが意図せず消費されるのを防げる。
Androidの設定
- 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「SIM」→対象SIMを選択→「ローミング」でON/OFF
- 機種・OSバージョンによりメニュー名が異なる場合がある
8. EUなど地域別の通話・SMS環境
渡航先の地域によって、通話・SMSの使いやすさは大きく変わる。
EU/EEA域内
EU/EEA域内では、EU/EEAのキャリアSIMを持つ加入者を対象にRLAH(Roam Like at Home)規制が適用されており、音声通話・SMS・データ通信の追加料金が原則として禁止されている。日本のキャリアSIMはこの規制の直接対象外だが、EUを周遊する旅行者はEU対応の旅行eSIMを使うことで複数国にわたるデータ通信を効率よく確保できる。EUローミングの詳細はEUローミング完全ガイドを参照してほしい。
中東・東南アジア・その他
地域によってVoIPアプリの使用がブロックまたは制限されている国がある。UAE(アラブ首長国連邦)では規制当局TDRAによりWhatsApp・FaceTime等のVoIP通話が制限されており、一般的なVoIP通話アプリが使えない状態が続いている。一部の中東諸国でも同様の制限がある。渡航先でVoIP通話が利用できるかどうかは、規制状況が変化する場合もあるため、渡航前に最新情報を確認すること。アジア各国の通信環境の比較については渡航先別・地域別SIM選びガイドでまとめている。
9. まとめ:用途別の選び方
| 状況 | 推奨する手段 |
|---|---|
| 相手もLINEやWhatsAppを使っている | IP電話アプリ(無料) |
| 日本の番号で着信を受ける必要がある | Wi-Fi Calling(キャリア対応が前提) |
| 長期滞在・データ大量消費 | 現地SIM・旅行eSIM+IP電話アプリ |
| 短期渡航・少量通信 | 国際ローミング定額パック or IP電話アプリ活用 |
| SMS認証コードの受信が必要 | ホームSIM維持(データローミングオフでも受信可) |
FAQ
以下によくある質問をまとめる。
Q. 海外でLINE通話を使えばローミング通話料金はかかりませんか? LINEなどのIP電話アプリはデータ通信(インターネット)を使って通話するため、音声ローミング料金は発生しません。ただしデータ通信を使うため、ローミングのデータ通信料金またはデータプランの消費が発生します。Wi-Fi環境下ではデータ消費もゼロです。
Q. 海外で日本の電話番号あてに着信が来ると料金がかかりますか? 国際ローミング中に日本の電話番号あてに着信を受けた場合、キャリアのプランによっては着信側にも料金が発生します(着信課金)。着信料金が気になる場合は、日本のSIMのデータローミングをオフにしてSMS・音声のみ有効にするか、IP電話アプリで対応する方法があります。詳細は利用中のキャリアの公式サイトで確認してください。
Q. 海外でSMS認証コードを受信できますか? ホームSIMが有効な状態であれば、SMSはデータローミングとは独立した経路で届くため、データローミングをオフにしていても受信できる場合があります。ただし渡航先の地域やキャリアのローミング協定によっては届かないケースもあります。海外でのSMS認証コード受信問題と対策で詳しく解説しています。
Q. Wi-Fi CallingはどのSIMでも使えますか? Wi-Fi Callingはキャリアとデバイスの両方が対応している必要があります。日本の大手キャリアではWi-Fi Callingの提供状況がキャリアやプランによって異なります。利用中のキャリアの公式サイトで対応状況を確認してください。
Q. 現地SIMを使う場合、日本への発信はどうすればよいですか? 現地SIMは現地の電話番号を持つため、日本への音声発信は国際通話料金が発生します。現地SIM+LINEやWhatsAppなどのIP電話アプリを組み合わせるのが一般的な節約策です。IP電話アプリ経由であれば現地SIMのデータ通信で日本へ通話でき、音声国際通話料金を回避できます。
関連ガイド
- 国際ローミングの仕組みと料金 — ローミングの技術的仕組みと料金モデル(発着信料金の詳細)
- EUローミング完全ガイド — EU/EEA域内でのRLAH規制と日本人渡航者への影響
- Wi-Fi Callingの仕組みと設定方法 — VoWiFiの技術仕様とキャリア別対応状況
- 海外でのSMS認証コード受信問題と対策 — SMS 2FAのリスクと認証アプリへの移行
- 渡航先別・地域別SIM選びガイド — アジア・欧州・中東など地域別の通信環境比較