「バンド」という言葉はスマートフォンの仕様表で目にしても、意味がわかりにくいと感じる人は多い。しかし端末選びでバンド対応を確認しないと、SIMを挿しても電波が圏外、または4Gが使えないという事態が起きる。
この記事では、LTEと5G NRのバンド番号の仕組み、日本の主要キャリア(ドコモ・au・SoftBank・楽天モバイル)が使う具体的なバンド一覧、「プラチナバンド」の意味、そして海外端末購入時の互換性確認の考え方を体系的に整理する。
1. 周波数帯(バンド)とは何か
モバイル通信は、電波という有限の資源を「周波数」で分割して使う。各国の電波行政機関が通信事業者に特定の周波数帯域を免許で割り当て、事業者はそこに基地局を整備する。
この「割り当て済み周波数帯域」に3GPP(3rd Generation Partnership Project)が国際標準の番号を付けたものがバンド番号(Band番号)だ。同じ物理的な周波数でも、LTEと5G NRでは別系列の番号が割り当てられる。
- LTE(4G): FDD(周波数分割複信)バンドには1番台から割り当てられ、TDD(時分割複信)バンドは33番以降に割り当てられる。拡張により100番台超のバンドも存在する(3GPP TS 36.101で規定)
- 5G NR(New Radio): n1、n3、n77、n78などのように「n」のプレフィックスが付く番号で識別される(3GPP TS 38.101で規定)
例えば「Band 1」はLTEの2.1 GHz帯、「n78」は5G NRの3.5 GHz帯(3,300〜3,800 MHz)を指す。同じ物理周波数であっても、LTEとNRでは番号体系が異なることに注意が必要だ。
2. 周波数の特性:高い帯域 vs 低い帯域
バンドを理解するうえで、周波数の高低が通信に与える影響を把握しておくと選択の基準が明確になる。
| 特性 | 低周波数帯(〜1 GHz) | 中周波数帯(1〜6 GHz) | 高周波数帯(ミリ波 24 GHz〜) |
|---|---|---|---|
| 伝搬距離 | 長い | 中程度 | 短い |
| 障害物への強さ | 強い(回折性が高い) | 中程度 | 弱い(直進性が強い) |
| 屋内浸透 | 良好 | 普通 | 困難 |
| 最大データ速度 | 遅い | 中〜高速 | 超高速 |
| 主な用途 | エリアカバー基盤 | データ容量確保 | 超高密度エリア |
低周波数帯(700〜900 MHz)は業界で「プラチナバンド」と呼ばれる。プラチナとは貴重な資源であることを意味し、少ない基地局数で広大なエリアをカバーでき、かつ建物内や地下でもつながりやすいため、通信インフラの基盤として非常に価値が高い。
高周波数帯(ミリ波)は速度は高いが、雨や建物で著しく減衰するため、現時点では駅ホームや大型スタジアムなど特定のスポットカバーに使われる。
3. 日本のキャリア別・主要バンド一覧
日本で使われている主要なLTEバンドと5G NRバンドを以下に示す。各キャリアが割り当てを受けた周波数に基づくバンドであり、実際の展開状況はエリアにより異なる。
NTTドコモ
| 規格 | バンド | 周波数帯 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| LTE | Band 1 | 2.1 GHz | 主要都市の屋外データ通信 |
| LTE | Band 3 | 1.7 GHz | 屋内・高密度エリア |
| LTE | Band 19 | 800 MHz | プラチナバンド・広域カバー |
| LTE | Band 21 | 1.5 GHz | 地方エリア補完 |
| LTE | Band 28 | 700 MHz | APT700・広域カバー |
| 5G NR | n78 | 3.5 GHz (Sub-6) | 5G主力バンド |
| 5G NR | n79 | 4.5 GHz (Sub-6) | 高容量エリア |
KDDI(au)
| 規格 | バンド | 周波数帯 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| LTE | Band 1 | 2.1 GHz | 主要都市のデータ通信 |
| LTE | Band 18 | 800 MHz | プラチナバンド(Band 26の一部に含まれる) |
| LTE | Band 26 | 850 MHz | Band 18を包含する拡張バンド |
| LTE | Band 28 | 700 MHz | APT700・広域カバー |
| 5G NR | n77 | 3.7 GHz (Sub-6) | 5G主力バンド |
| 5G NR | n78 | 3.5 GHz (Sub-6) | 5G主力バンド |
SoftBank
| 規格 | バンド | 周波数帯 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| LTE | Band 1 | 2.1 GHz | 主要都市のデータ通信 |
| LTE | Band 3 | 1.7 GHz | 屋内・高密度エリア |
| LTE | Band 8 | 900 MHz | プラチナバンド・広域カバー |
| LTE | Band 28 | 700 MHz | APT700・広域カバー |
| 5G NR | n77 | 3.7 GHz (Sub-6) | 5G主力バンド |
| 5G NR | n3 | 1.7 GHz (Sub-6) | 都市部補完 |
| 5G NR | n28 | 700 MHz | 5Gプラチナバンド |
楽天モバイル
| 規格 | バンド | 周波数帯 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| LTE | Band 3 | 1.7 GHz | 自社エリアの主力バンド |
| LTE | Band 18 | 800 MHz | au回線パートナーエリア(旧) |
| 5G NR | n77 | 3.7 GHz (Sub-6) | 5G主力バンド |
楽天モバイルは自社4G回線ではBand 3のみを持つ。都市部カバーは主要4バンドの中で最も少なく、地方・山間部ではエリア外になりやすい点に注意が必要だ。
キャリアの種別(MNO・MVNO・サブブランド)について詳しくはMNO(大手キャリア)とは — MVNO・サブブランドとの違いで解説している。
4. プラチナバンドの意味と重要性
「プラチナバンド」は3GPPや総務省が公式に定義した用語ではなく、業界・メディアが広く使う通称だ。一般的に700〜900 MHz帯の低周波数帯全体を指す。
プラチナバンドが重要とされる理由は2点ある。
1. 広域カバー性: 周波数が低いほど電波は減衰しにくく、1つの基地局から電波が届く半径が広くなる。同じエリアをカバーするために必要な基地局数が少なくて済み、キャリアにとっては投資効率が高い。
2. 屋内・地下での接続性: 低周波数の電波は建物の壁や地面への浸透力が高い。地下鉄の構内や鉄筋コンクリートの建物内で「電波が入りやすい」のは、プラチナバンドが使われているためだ。
楽天モバイルは2023年以前、プラチナバンドを自社では保有していなかった。2024年6月27日からBand 28(700 MHz)の商用サービスを開始し、屋内・地下での接続性が改善されつつある。
SIMフリー端末でMVNOを使う場合も、端末がバンド19(ドコモ系回線)やバンド18/26(au系回線)に対応しているかどうかが、地方や屋内での繋がりやすさに直結する。
5. 海外端末が国内で繋がりにくい理由
海外で購入した端末を日本で使うと「圏外」や「4Gが繋がらない」という問題が起きる場合がある。主な原因は以下の2点だ。
バンドの非対応
端末は販売地域ごとに対応バンドが異なる場合がある。北米向けモデルはAWSバンド(Band 4: 1700/2100 MHz)やBand 12/13/14(700 MHz)など北米固有のバンドを優先して搭載する一方、日本固有のBand 19(ドコモのプラチナバンド、800 MHz)やBand 21(ドコモ1.5 GHz)に非対応のことがある。
例えば欧州向けモデルは日本と共通するBand 1・Band 3・Band 8などを持つことが多いが、Band 19は非対応の場合がある。この場合、ドコモ系回線では都市部ではつながっても、地方・建物内でプラチナバンドに切り替わるタイミングで圏外になる可能性がある。
技術基準適合(技適)
日本の電波法は、国内で使用する無線機器に技術基準適合証明(いわゆる「技適マーク」)の取得を義務付けている。技適を取得していない端末は、SIMが物理的に刺さって動作しても、日本国内での使用は電波法上認められない。
海外の技適相当マーク(FCC:米国、CE:欧州など)を取得していても、日本の技適とは別物だ。日本向け正規品として販売されている端末には技適マークが付いているが、並行輸入品や個人輸入品では技適取得状況を確認する必要がある。
SIMロックとSIMフリー — 確認方法と解除手順では、端末を別キャリアで使う際のロック解除手順も詳しく説明している。
6. 対応バンドの確認方法
メーカー公式スペックページで確認する
最も正確な方法は、端末メーカーの公式サイトにある仕様ページを参照することだ。
- iPhone: Appleサポートサイト(support.apple.com)から各モデルのTech Specsページを参照する(例: iPhone 16の場合は「iPhone 16 - 技術仕様」ページ)
- Google Pixel: Google ストアの各モデル仕様欄
- Samsung Galaxy: Samsung サポートの製品仕様ページ
仕様ページには「Cellular & Wireless」または「通信方式」の項目があり、対応バンドの一覧が記載されている。
IMEIを使った確認
IMEI(International Mobile Equipment Identity)は端末ごとに割り当てられた15桁の識別番号だ(3GPP TS 23.003で規定)。IMEIから端末のモデル・リージョン・対応バンドを調べられるサードパーティサービス(kimovil.com、IMEI.info等)が存在する。
IMEIは端末の設定アプリ(「設定」→「一般」→「情報」(iPhone)または「設定」→「端末情報」(Android))で確認できる。または *#06# をダイヤルすると表示される端末も多い。
ただしサードパーティのIMEIルックアップサービスは、データの正確性やリアルタイム性をメーカーが保証していない。確認の入口として使い、最終確認は必ずメーカー公式スペックページで行うこと。
キャリアの動作確認リストで確認する
SIMフリー端末のバンド対応だけでなく、キャリアがその端末での動作を確認しているかどうかも重要だ。ドコモ・au・SoftBank・楽天モバイルは各自のWebサイトで「SIMフリー端末動作確認済み一覧」を公開している。リストに掲載されていない端末は、技術的には対応バンドでも動作が保証されない場合がある。
VoLTE(音声通話)の互換性については、バンド対応に加えてキャリアのホワイトリスト登録が必要なケースがある。詳しくはVoLTEとVoNRとは — 4G/5Gで通話する仕組みと対応端末で解説している。
7. 海外端末購入時の互換性確認の考え方
海外で端末を購入する、または海外版のSIMフリー端末を日本で使う場合は、以下の順序で互換性を確認する。
ステップ1:メーカー公式スペックページで対応バンドを確認 購入予定の端末の地域モデル(例:日本向けSM-S921B/DSなどのモデル番号)を特定し、対応バンドを確認する。
ステップ2:使用するキャリアの主要バンドと照合 本記事の第3節の表を参考に、自分が使うキャリアのプラチナバンドを端末がサポートしているか確認する。特にエリア基盤となる低周波数帯(Band 19、Band 18/26、Band 8、Band 28)の対応有無が重要だ。
ステップ3:技適マーク・国内販売状況を確認 日本国内で合法的に使用するため、技適取得済みかどうかを確認する。
ステップ4:キャリアの動作確認リストを参照 特にVoLTE通話やテザリングを使う予定がある場合は、キャリアの動作確認済みリストに掲載されているかを確認する。
MVNOで使う場合も、MVNOの回線を提供する元のMNO(ドコモ系・au系・SoftBank系)のバンドに対応しているかが判断基準になる。MVNOの仕組みについては格安SIM(MVNO)とは — 仕組みとメリット・デメリットで解説している。
海外旅行中に現地SIMや旅行eSIMを使う際のバンド互換性については、国際ローミングの仕組みと料金 — 海外でキャリアSIMを使う方式も参考になる。
8. キャリアアグリゲーション(CA)と複数バンドの活用
現代のスマートフォンとネットワークは、単一のバンドを使うだけでなく、複数のバンドを同時に束ねて通信速度を高める「キャリアアグリゲーション(CA)」を活用している。
CAは3GPP Release 10(LTE-Advanced)で初めて規格化された技術で、複数の「コンポーネントキャリア(CC)」を束ねることで下り速度を大幅に向上させる。5G NRでも同様にCA対応が拡大している。
この仕組みがあるため、端末が複数のバンドに対応しているほど、キャリアが提供する高速通信(5CC CAなど)の恩恵を受けやすくなる。スペック表で多くのバンドに対応している端末ほど、CAによる速度向上の機会が増える。
ただし、対応バンドが多くても、エリアによってCAで束ねられるバンドの組み合わせはキャリアの設備によって異なる。端末の最大速度(カタログスペック)は最適条件下の値であり、実際の利用環境では異なる。
旅行eSIMやSIMフリー端末の選び方については旅行eSIMの選び方 — 5つの比較ポイントと失敗しないコツも参照してほしい。
FAQ
バンドとは何ですか?
バンド(Band)は、モバイル通信に割り当てられた特定の周波数範囲に付けられた番号です。例えば「Band 1」は2.1 GHz帯、「Band 19」は800 MHz帯を指します。3GPPが国際標準として番号を割り当てており、LTEはFDDバンドに1番台から、TDDバンドに33番以降の番号が割り振られ、拡張により100番台超のバンドも存在します。5G NRバンドはn1、n77、n78のように「n」のプレフィックスが付きます。
プラチナバンドとは何ですか?
プラチナバンドとは、おおむね700〜900 MHz帯の低周波数帯を指す業界の通称です。低周波数の電波は障害物を回り込む性質(回折性)が高く、建物内や地下、山間部など電波が届きにくい場所でもつながりやすい特性があります。一般的にデータ速度は高周波数帯より遅くなりますが、広いエリアをカバーできるため、各キャリアのエリア基盤として機能します。
海外で買ったスマートフォンが日本で使えないのはなぜですか?
端末がサポートする周波数バンドは販売地域ごとに異なる場合があるためです。北米向けモデルはAWS(1700/2100 MHz)など日本で使われないバンドを優先している一方、日本固有のバンド(Band 19、Band 21など)に非対応のケースがあります。また、技術基準適合(技適)を取得していない端末は日本国内での使用が電波法上認められません。
端末のバンド対応状況はどこで確認できますか?
端末の対応バンドはメーカー公式サイトの仕様ページ(Specifications / Tech Specs)に記載されています。iPhoneはAppleサポートサイト、PixelはGoogleストア、Samsung GalaxyはSamsungサポートで確認できます。また、端末のIMEIを使って「kimovil.com」「IMEI.info」などのサードパーティサービスでバンド対応状況を調べることも可能ですが、最終的な情報は必ずメーカー公式を確認してください。
5GのSub-6 GHzとミリ波(mmWave)はどう違いますか?
Sub-6 GHz(サブ6)は6 GHz以下の周波数帯(主に3.4〜4.9 GHz)を使い、LTEより高速で広いエリアをカバーできます。ミリ波(mmWave)は24〜100 GHz帯を使い、超高速通信(数Gbps超)が可能ですが、直進性が強く障害物に弱いため、スタジアムや駅構内など特定の高密度エリアに限定されます。日本の5Gは現状Sub-6 GHzが主体です。
まとめ
- バンド番号はモバイル通信の周波数帯域に付けた識別番号。LTEはBand N(3GPP TS 36.101)、5G NRはnN(3GPP TS 38.101)の番号体系を使う。
- プラチナバンド(700〜900 MHz)は広域カバーと屋内浸透力を持つ基盤周波数帯。Band 19(ドコモ)・Band 18/26(au)・Band 8(SoftBank)・Band 28(ドコモ・au・SoftBank)が該当する。
- 日本の5G主力バンドはSub-6 GHz帯(n77: 3.7 GHz、n78: 3.5 GHz、n79: 4.5 GHz)。ミリ波(n257等)は特定エリアのみ。
- 海外端末が国内で使いにくい原因は、バンドの非対応と技適未取得の2点。特にプラチナバンド対応の有無が地方・屋内カバーに直結する。
- 互換性確認の方法はメーカー公式スペックページが最優先。IMEIルックアップは補助的な用途に限定し、最終確認は必ず公式で行う。
通信用語全般については通信用語集 — SIM・eSIM・MNO/MVNOの基礎用語も参考にしてほしい。