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4G/LTE・5Gとは — 違いと仕組みを解説

スマートフォンの電波表示で「4G」「LTE」「5G」という文字を目にする。これらはすべて異なる世代の移動通信規格を示しており、それぞれ速度・遅延・カバレッジの特性が異なる。

この記事では、4G LTEと5Gの技術的な違いを3GPP規格の観点から整理し、NSA/SA構成の違い、Sub-6/ミリ波の特性、VoLTE/VoNRとの関係、そして日本での展開状況を解説する。


1. 4G/LTEとは — 3GPP Release 8から始まった規格

**LTE(Long-Term Evolution)**は、3GPP(3rd Generation Partnership Project)のRelease 8で規格化された移動通信方式だ。Release 8は2008年12月に凍結された。

LTEがITU(国際電気通信連合)の「4G(IMT-Advanced)」要件を厳密に満たしたのは、3GPP Release 10のLTE-Advancedからだ。LTE-Advancedは2011年に完成し、IMT-Advanced要件を満たす正式な4G技術として認定された。ただし業界慣行として、Release 8のLTEも「4G」と呼ばれることが定着している。

LTEの主な技術的特徴を整理する。

  • OFDMAアクセス方式: 下りリンクにOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)、上りリンクにSC-FDMA(Single-Carrier FDMA)を採用。周波数を効率的に複数ユーザーで共有する。
  • MIMO: 複数のアンテナを送受信で使うMIMO(Multiple Input Multiple Output)技術により、空間多重化で伝送容量を向上させる。
  • オールIPネットワーク: 音声・データをすべてIPパケットで処理するアーキテクチャ(EPS: Evolved Packet System)を採用した。

Release 10で追加されたキャリアアグリゲーション(CA)は、複数の周波数帯(コンポーネントキャリア)を束ねて同時に使うことで実効速度を高める技術だ。CAは3GPP Release 10で最初に規格化され、最大5コンポーネントキャリア(各最大20MHz)で最大100MHzの帯域幅を扱える。

SIMカードとネットワーク認証の仕組みについては、SIMとは何か — 基礎知識と選び方で解説している。

LTE-Advanced以降もリリースは継続されており、Release 12でのProSe(端末間直接通信)、Release 13でのNB-IoT規格化など、4Gは単一の「固定された規格」ではなく段階的に拡張されてきた。現在も4Gは全国規模のカバレッジインフラとして機能しており、5Gが未整備のエリアでは4Gが主力であり続ける。VoLTE対応など音声通話の基盤としても4Gの役割は大きく、今後数年は4Gと5Gの併用が続く見込みだ。


2. 5G NRとは — 3GPP Release 15以降の規格

**5G NR(New Radio)**は、3GPP Release 15以降で規格化された次世代移動通信方式だ。Release 15はNSA(Non-Standalone)版の最初の仕様が2017年12月にリリース(ASN.1凍結は2018年3月)され、SA(Standalone)版は機能凍結2018年6月・ASN.1凍結2018年9月に完成した。

5G NRは3つの主要ユースケースを定義している。

ユースケース略称特性
超高速大容量eMBB動画ストリーミング・AR/VRなど大容量通信
超低遅延高信頼URLLC自動運転・遠隔医療など遅延に敏感な用途
大量端末接続mMTCIoT機器など多数の低消費電力端末の同時接続

5G NRは4G LTEとの後方互換性を持ちながら、新しいフレーム構造(NR numerology)と周波数レンジの拡張によって性能を高めている。

eMBBは現在の商用5Gで最も広く活用されているユースケースで、大容量動画配信やライブストリーミングなどが該当する。URLLCやmMTCはより専門的な産業用途向けであり、特にURLLCはSA構成と組み合わせることで初めてその低遅延特性を十分に引き出せる。現時点の一般消費者向け5Gサービスは主にeMBBの恩恵を受ける形となっている。


3. 5G NSAと5G SA — 2つのアーキテクチャ

5G NRの商用展開では、2つの異なるアーキテクチャが使われている。

NSA(Non-Standalone)

**NSA(Non-Standalone)**は、5G NR無線基地局(gNB)と既存の4G LTEコアネットワーク(EPC: Evolved Packet Core)を組み合わせた構成だ。5G NRは無線アクセス側のみを担い、コアネットワークはLTE世代のままとなる。

NSAの利点はLTEインフラを再利用できるため展開コストと時間を抑えられることだ。日本のキャリアが当初5Gを展開した際もNSA構成が中心だった。ただし、コアがLTE(EPC)のままであるため、5G SAでのみ実現できる機能(ネットワークスライシング、VoNRなど)は使えない。

SA(Standalone)

**SA(Standalone)**は、5G NR無線基地局(gNB)と5G世代のコアネットワーク(5GC: 5G Core Network)を組み合わせた構成だ。NSAとの違いはコアネットワークも5G世代(5GC)に置き換わる点にある。

SAを利用することで以下の機能が有効になる。

  • ネットワークスライシング: 用途ごとに論理的に分離されたネットワーク(スライス)を構成できる。
  • VoNR(Voice over New Radio): 5G NR上での音声通話。詳細は後述。
  • より低い遅延特性: 5GCの新しいプロトコルスタック(SBA: Service-Based Architecture)により、制御プレーンの遅延が改善される。

日本のキャリアは5G SA対応エリアを順次拡大中だが、現時点ではSA対応エリアは限定的であり、SA対応エリア外では5G NSAまたは4G LTEにフォールバックする。

利用者の観点では、NSAとSAの切り替えは端末が自動的に行うため、通常は意識する必要がない。ただし、ネットワークスライシングを利用したサービス(特定のアプリやビジネス用途で帯域保証を受けるケースなど)はSA対応エリアでのみ利用可能となる。一般的なデータ通信・通話の利用では、NSAとSAの差は体感しにくいことが多い。


4. Sub-6とミリ波 — 5Gが使う周波数帯

5G NRは使用する周波数帯によって特性が大きく異なる。3GPPはFrequency Range 1(FR1)とFrequency Range 2(FR2)の2つに分類している。

FR1(Sub-6GHz帯)

FR1は6GHz以下の周波数帯で、Sub-6とも呼ばれる。3GPP NR仕様でFR1の上限は7.125GHzまで拡張されている(3GPP Release 17以降でFR1の上限が7.125GHzに拡張)。

Sub-6の特性は以下のとおりだ。

  • エリアカバレッジ: 低い周波数ほど電波の回り込みが大きく、建物内や遮蔽環境でもある程度届く。
  • 通信速度: ミリ波より帯域幅が限られるため最大速度はミリ波より低い。
  • 日本での展開: 日本のキャリアは主にSub-6帯(例:3.7GHz帯、4.5GHz帯)を使って5Gエリア拡大を進めている。

FR2(ミリ波帯)

FR2は24GHz以上の高周波帯で、**ミリ波(mmWave)**と呼ばれる。

  • 超高速・超大容量: 広い帯域幅を確保できるため、理論上の最大速度が大幅に高くなる。
  • 短距離・直進性: 周波数が高いほど電波の直進性が高く、遮蔽物に弱い。建物の壁や人体でも大幅に減衰する。
  • 用途: 競技場・駅・空港など特定エリアへの高密度展開に向いている。

現在の5G対応スマートフォンの多くはSub-6(FR1)のみに対応しており、ミリ波に対応しているのは一部の上位モデルに限られる。5G端末を購入する際に「Sub-6対応」と「ミリ波対応」を区別して確認することが重要だ。日本国内でのミリ波展開はまだ限定的なエリアにとどまっているため、現時点では多くのユーザーにとってSub-6対応かどうかが実質的な判断基準となる。


5. 4Gと5Gの性能比較

4G LTEと5G NRの技術的な性能を比較する。ここで示す数値は規格上の理論値または典型的な目安であり、実際の速度はエリア・端末・利用状況によって大きく異なる。具体的な速度については断定を避け、特性の違いとして理解してほしい。

項目4G LTE(Release 8〜)5G NR(Release 15〜)
主なアクセス方式OFDMA(DL)/ SC-FDMA(UL)OFDMA(DL/UL)
典型的な遅延数十ms程度SAで数ms〜十数ms程度(理論値)
同時接続密度〜10万台/km²(目安)〜100万台/km²(mMTCユースケース目標)
最高周波数帯最大6GHz未満Sub-6 + ミリ波(FR2)
コアネットワークEPC(Evolved Packet Core)NSA:EPC / SA:5GC
ネットワークスライシングなしSAで利用可能

遅延の数値は、特にURLLC(超低遅延)ユースケースにおける5G SAの理論目標値だ。現在の商用ネットワークでの実測値はこれより大きくなる場合がある。

なお、4Gと5Gで同じ量のデータを転送する場合、消費するデータ通信量は変わらない。5Gで速度が上がるとダウンロードが速く完了するが、転送したデータ量(バイト数)は同じだ。ただし、速度が高いことで高画質動画を選びやすくなるなど、間接的にデータ消費量が増えるケースはある。また、実際の通信速度は使用する周波数帯・基地局との距離・周辺の利用者数(混雑状況)・端末の性能によって変化するため、規格上の理論値がそのまま実測値になることはない。


6. VoLTE・VoNRとの関係

音声通話の技術は、使用するネットワーク世代によって異なる。

4G(LTE)環境: 音声通話は**VoLTE(Voice over LTE)**が担う。VoLTEはIMS(IP Multimedia Subsystem)を使って音声をIPパケットで伝送する技術で、GSMA PRD IR.92で仕様が定義されている。

5G NSA環境: コアネットワークがLTE(EPC)のままであるため、音声通話はVoLTEが引き続き使われる。

5G SA環境: コアが5GC(5G Core)に移行することで、**VoNR(Voice over New Radio)**が利用可能になる。VoNRは3GPP Release 15で規格化された5G NR上の音声通話技術で、EVS(Enhanced Voice Services)コーデックによるさらに高音質な通話が可能だ。

VoLTEとVoNRとは — 4G/5Gで通話する仕組みと対応端末では、IMS・SIPシグナリング・QoSの仕組みから3G停波後の注意点まで詳しく解説している。


7. 日本における5G展開の現状

日本の大手キャリア(NTTドコモ・KDDI/au・ソフトバンク・楽天モバイル)はいずれも5G NRの商用サービスを展開している。

日本の5G展開に関して確実に言えることは以下のとおりだ。

  • Sub-6帯が中心: 日本のキャリアは主にSub-6帯(3.7GHz帯・4.5GHz帯など)を使って5Gエリアの拡大を進めている。
  • NSAからSAへ移行中: 多くのキャリアは当初5G NSA構成で展開し、SA対応エリアを順次拡大している。SA対応エリアはキャリアの公式エリアマップで確認できる。
  • エリアはまだ拡大中: 都市部を中心に整備が進んでいるが、地方や建物内での5G利用は4G LTEにフォールバックする状況が続いている。

5Gを活用する際は、自分が使うエリアとキャリアの5G対応状況(NSA/SA、対応バンド)を事前に確認することが重要だ。端末が5G対応でも、契約キャリアの5Gバンドに端末が非対応だと5Gの恩恵を受けられない。

5G対応端末であっても、5Gエリア外では自動的に4G LTEにフォールバックして動作する。これはユーザーが設定を変更しなくても端末が自動で行う処理であり、フォールバック中でも通話・データ通信は継続して利用できる。地方や建物の奥まった場所では4G接続が常態となるケースも多く、5G端末を持っていることが常に5G接続を保証するわけではない点は理解しておきたい。

端末の周波数バンド対応については周波数バンドとは — 対応バンドの確認方法で詳しく解説している。

MNO(大手キャリア)とMVNOの関係についてはMNOとは — 大手キャリアの仕組みで解説している。5G展開はMNOが行い、MVNOはMNO回線を借りる形でサービスを提供するため、5Gを利用できるかどうかはMVNO各社の対応状況にも依存する。

また、現在も4Gは5Gを補完するインフラとして重要な役割を担っている。VoLTEは4G LTE上で動作するため、5G NSA環境での通話は依然として4G LTEのコアネットワークを使う。このことからも、4Gが当面の間、5Gと並行して運用されていく理由がわかる。日本の3G停波後も、4G/LTE網は継続して維持される見込みだ。


8. SIM選びと4G/5Gの関係

4G/5Gの技術知識は、SIMカード・プランを選ぶ際の判断基準に直結する。

5G対応SIMが必要か確認する: すべてのSIM・プランが5Gに対応しているわけではない。5Gを使いたい場合は、契約するキャリア・MVNOのプランが5G対応であることを確認する。

端末と周波数バンドの整合性: SIMフリー端末を購入する際は、契約予定のキャリアが使う5G周波数バンドを端末がサポートしているかを確認する。特に海外モデルの端末は、日本キャリアのバンドに対応していない場合がある。

データ節約との関係: 5Gエリアでは速度が高いため、意図せず多くのデータを消費することがある。データ節約の方法についてはデータ通信量の節約方法で解説している。

SIMと端末の互換性: SIMカードそのものとeSIMの違い、対応端末についてはSIMとeSIMの違い — 選び方と切り替え方法で確認できる。

海外での5Gローミング利用については国際ローミングとは — 海外でのSIM利用ガイドで解説している。ローミング時の5G対応可否はローミング協定の内容に依存する。

SIMプランを選ぶ際に「5G対応」と記載されていても、実際に5G通信を体験できるかどうかは生活エリア・使用端末・キャリアの展開状況の3つが揃って初めて決まる。これらを事前に確認することが、プラン選択で後悔しないための実践的なポイントだ。


FAQ

4GとLTEは同じものですか?

厳密には異なります。LTE(Long-Term Evolution)は3GPP Release 8で規格化された通信方式で、国際電気通信連合(ITU)の「4G」要件(IMT-Advanced)を当初は満たしていませんでした。その後、LTE-Advanced(Release 10)がIMT-Advanced要件を満たし、正式な4G技術となりました。現在は「4G/LTE」としてほぼ同義に使われています。

5G NSAと5G SAはどう違いますか?

NSA(Non-Standalone)は5G NR無線と4G LTEコアネットワーク(EPC)を組み合わせる構成です。SA(Standalone)は5G NR無線と5Gコアネットワーク(5GC)を両方5G世代に置き換えた構成です。SAのほうが低遅延・ネットワークスライシングなど5Gの特性をフルに発揮できます。現在の日本では5G NSAの展開が中心で、SA対応エリアは順次拡大中です。

Sub-6とミリ波の違いは何ですか?

Sub-6(サブ6)は6GHz以下の周波数帯を使う5G NRで、電波の遮蔽に強くエリアカバレッジが広い反面、ミリ波より最大速度は低くなります。ミリ波(mmWave)は24GHz以上の高周波帯で超高速・超大容量ですが、電波の直進性が高く遮蔽物に弱いため屋内や遠距離での利用が難しいです。日本では現在、Sub-6帯を中心に5G展開が進んでいます。

5G対応端末を持っていても5Gが使えない場合があるのはなぜですか?

主な理由は3つです。①エリア外:5Gエリアに居ない場合は4G LTEにフォールバックします。②バンド非対応:端末が契約キャリアの5G周波数バンドに対応していない場合があります(特に海外モデル端末)。③NSA/SA非対応:一部端末はSA構成の5Gに対応していない場合があります。

4Gと5Gで通話の仕組みは変わりますか?

4G環境ではVoLTE(Voice over LTE)が音声通話を担います。5G NSA環境でも音声通話はVoLTEが使われます。5G SA環境ではVoNR(Voice over New Radio)が利用可能になりますが、SA対応エリア外ではVoLTEにフォールバックします。VoLTEとVoNRの詳しい仕組みはVoLTEとVoNRとは — 4G/5Gで通話する仕組みと対応端末で解説しています。


まとめ

  • 4G LTEは3GPP Release 8で規格化。LTE-Advanced(Release 10)でITU IMT-Advanced要件を満たした。
  • 5G NRは3GPP Release 15以降で規格化。eMBB・URLLC・mMTCの3ユースケースを定義。
  • NSAはLTEコア+5G NR無線の構成。SAは5GC+5G NR無線で、VoNRやネットワークスライシングが利用可能。
  • **Sub-6(FR1)**は広域カバレッジ向き。**ミリ波(FR2)**は超高速・短距離向き。日本はSub-6中心に展開中。
  • 音声通話は4G・5G NSAではVoLTE、5G SAではVoNRが使われる。
  • 5G対応端末でも5Gエリア外では4G LTEに自動フォールバックする。実際に5Gを利用できるかは、エリア・端末バンド対応・プランの3点を確認することが重要。
  • 4Gと5Gで同量のデータ転送であればデータ消費量は同じ。速度向上が高画質コンテンツ選択を促す間接的な影響はある。

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